【書評】人々の創造力で経済の再設計を!ムハマド・ユヌス最新刊『3つのゼロの世界』

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バングラデシュといったら、ムハマド・ユヌス。2006年にノーベル平和賞を受賞されたグラミン銀行の創設者ですね。貧困層への少額融資マイクロクレジットの生みの親とも言われています。

世界でソーシャルビジネスのパイオニアとして評価されているユヌス博士ですが、実はバングラデシュの内側からの声を聞いてみると賛否両論、様々な意見が聞こえてきます。

近年の実態を追えていなかったので、そんなユヌス博士のこと知るべく最新刊『3つのゼロの世界ーー貧困0・失業0・CO2排出0の新たな経済』を読んでみました。

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 資本主義の前提から問題提起

本書でユヌス博士が一環して主張しているのは「現在の資本主義は前提が本当の人間の姿に合っていないため再設計すべきである」ということ。

要素として次の3点のように述べられています。

再設計された経済のエンジンには、三つの基本的な要素がある。第一に、われわれはソーシャル・ビジネスの考え方を受け入れる必要がある。無私という人間の美徳に基づいた新しい事業形態だ。第二に、人間は仕事を探す者だという考えを捨て、人間は起業家だという新しい考えと置き換える必要がある。第三に、経済の底辺にいる人たちに効果的に機能するよう、金融システム全体を設計し直す必要がある。

 資本主義では人間が自己の利益を追求する利己的なものという前提が置かれていますが、ユヌス博士はグラミン銀行の経験を通じて、自分の利益のみの固執する人というのはほとんどいないことを指摘します。

また多くのひとが資本家に「雇われる」ことを前提とした資本主義ですがこの意識も取っ払う必要があると言っているんですね。

世界に広がるアントレプレナーシップ

この再設計のためのカギとなるのがアントレプレナーシップ(起業家精神)です。

本書の中ではこの精神を体現した事例がこれでもかと言うほど盛り込まれています。

この取り組みが3つの分野に整理されて述べられているのですが、その分野というのがタイトルにもあるように「貧困・失業・環境」です。

この事例を読んでいて驚いたのが、とても多くの国に活動が展開されていることです。

バングラデシュ発の組織が貧困・失業・環境のために取り組むというと途上国を対象にするという印象を持ってしまいますが、展開地域はバングラデシュをはじめ、アメリカやヨーロッパにも広がっています。

経済を再設計するということは途上国のみの話ではなく先進国を支えていた資本主義の根幹を構築しなおして、地球全体で次のステージに進むことを意味するんだと改めて理解しました。

実際、日本も他人事ではなく、日本の貧困状態に着目したグラミンは日本に展開することを昨年発表しました。そして先日より、その立ち上げのためにクラウドファンディングを行っています。

camp-fire.jp

遠い途上国の話ではないということを実感してきますね。

人間は誰もが起業家だ。男性でも女性でも、農村にいても都市にいても、豊かでも貧しくても例外はない。

この言葉が示すように置かれた環境を問わず、少しでも社会を前進させようとする信念を強く感じる1冊でした。

この最新刊の出版に伴って3月24〜27日の4日間来日して記念講演をされるようなので今後の経済がどうあるべきなのか、ソーシャルビジネスとは何かなど関心のある方は足を運んでみてもいいかもしれませんね。

sbrc.kyushu-u.ac.jp

講演に行けない方もぜひ本書を通して、ユヌス博士の訴える経済のあるべき姿を見てはいかがでしょう。

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