【書評】「現場」のイメージを鮮明に!忍足謙朗『国連で学んだ修羅場のリーダーシップ』

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たたき上げの国連リーダー
本日ご紹介するのはこちらの『国連で学んだ修羅場のリーダーシップ』です。
本書では、ボスニアやコソボといった紛争地、カンボジアやスーダンで緊急支援の最前線で指揮を執られてきた忍足さん自身の現場での経験を綴っています。
しかし、こちらの本、驚いたことに支援現場の受益者に焦点を当てた記述がほとんど出てきません。
それもそのはず、本のタイトルにもあるようにリーダーシップを綴ったものですので、現場の指揮者としての視点で描かれています。国際協力関係の多くの書籍では現場の悲惨な状況を伝えることに力を入れられていることが多いですが、本書ではオペレーションの様子を鮮明に綴っているところに読み応えを感じました。
「現場」の意味を問い直す
支援の現場とは、「受益者」の直面している問題を考えがちですが、「支援者」の中にも様々な苦労があることが本書から伺えます。
例えば、雇用契約について。WFPでは現地オフィスの10%程がインターナショナルスタッフと呼ばれる本部や現地オフィスを行き来するスタッフで、残りの90%は現地採用のローカルスタッフで構成されます。
しかし、このローカルスタッフの中でも正規雇用と臨時雇用の2種類があり、臨時雇用の場合は長く働いてもローンも受けられず退職金も出ないといった生活に響く問題があると挙げられています。
支援をするにしても、支援をする側の人事システムに課題があることでスタッフは安心して働くことはできません。
現場指揮者である忍足さんはこのような課題を改善すべく組織内の契約体系を改めると共に9割をしめるローカルスタッフへの敬意を忘れません。
そんな忍足さんがローカルスタッフを大切にしていることが伝わるこんなエピソードが印象的でした。
WFPでは10年間勤続したスタッフに、長年の勤務に感謝し、銀のピンバッジが支給されるのが決まりとなっていた。ところが、ローカルスタッフの中でも非正規雇用契約の人たちには、そのピンバッジが支給されないことになっていた。「あなたたちはWFPの職員ではない」という理由のためだ。ローマ本部に行った際、僕は人事部に乗り込んで、職員が見ている前で保管庫から勝手にピンバッジを一握りほど摑み取り、ポケットに入れた。「ミスター・オシダリそれは困ります。泥棒行為ですよ」と言われたが、「請求書はスーダン・オフィスの僕に回すように」とだけ言い捨てた。
ピンバッジとは小さなものかもしれませんが、どんな部下でも思いやり、みんなから信頼される理由がよく分かる一幕でした。
このように見てみると、 「現場」と言うのは「受益者」と「支援者」のどちらも思考の対象になることがわかると思います。どのように人を動かすのか考えてこその「現場」なんですね。
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決断のスピードのはやさがカギ
また、本書を読んでいてつくづく感銘を受けるのが忍足さんの決断のはやさ。
緊急支援の現場では人の命がかかっているため時間が何よりも勝負です。また、緊急というくらいですから完全な情報を整っていないまま判断をくださなければならないわけですが、正直なところ「勘」にも頼っているとのこと。
瞬時に必要なものを考えて調達し、提供し、支援完了するまでの道筋を描けるのは編集力の高さがものを言うのでしょう。
ここでいう編集力は日本に住んでいるとなかなか身につかないような気がします。というのも必要なもの、何か足りないものがある時はお金出して買ってしまえば間に合ってしまいます。
しかし、途上国のようにものやサービスが足りないなかで知恵を絞って足りないものを埋め合わせるという生活を送ることで養えるものなのかもれません。
まとめ
忍足さんの信念に基づいたスタッフへの敬意や決断力といった点には心打たれるばかりでぜひみなさんに読んで頂きたいです。
昨年、忍足さんが早稲田大学に授業で来られたことがあったのですがどうしても都合が合わず。。。本書だけでもこんなに刺激的なのにもし本人に会えていれば。。。と思わずにはいられない一冊でした。
国際協力を志すみなさんぜひ読んでみてください。おすすめです。
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