ロヒンギャ難民再び帰還延期に。国連が訴える国際法の課題とは?

ロヒンギャ難民再び帰還延期に。国連が訴える国際法の課題とは?

11月15日からバングラデシュとミャンマーの合意に基づいてロヒンギャ難民がバングラデシュから帰還を始めるということでしたが、結果として第1陣としてネームリストにあげられていた方々は帰還せず。

なぜ帰還が進まないのでしょうか?状況を整理してみましょう。

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国の義務と個人の意志

今回の帰還が進まなかった理由は2つあると考えられます。

1つ目が個人の意志。ミャンマーに戻ることで再び迫害を受ける恐怖や不安から帰還をそもそも望んでいないということです。

AFPのニュースでも

対象となっている男性(85)は「やつらは息子2人を殺した。私は別の息子2人と一緒にバングラデシュに逃れた。どうか私たちを送り返さないでほしい。残りの家族も殺される」と訴えた。

というふうに取り上げられているように、帰還の対象となった方々が帰還を受け入れていません。ネームリストに挙げられた人の多くが身を隠しているという報道もあります。

結果として15日は1人もミャンマーには戻っていないようです。(ただ、政府によって用意されたネームリストに載っていない人の中には政府や国連の支援を受けずに自らの意志で帰還した人もいるようです)

もう1つが、国の義務。国連は現状のままロヒンギャ難民を帰還させることはバングラデシュの国際法違反に当たると訴えています。

どんな国際法かというと難民条約で規定されている「難民を彼らの生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない」というルールです(この原則を一般に「ノン・ルフールマンの原則」といいます)。

第33条【追放及び送還の禁止】
1 締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない。

ミャンマー側で依然として生命や自由が脅威にさらされるおそれがあるために帰還させることはこの原則に反するということですね。

ただ、少し調べるとわかるのですが、実はバングラデシュはこの難民条約の当事国ではないため、本来、この条約上の義務は発生しません。

しかし、国際法では「慣習国際法」という概念があります。これはどういうことかというと、合意によって結ばれた条約がなくても各国が守るべきルールと言えます。

語弊を恐れずにくだけた言い方をしてしまうと、「わざわざルール決めなくてもこれは最低限守るべきだよね」と考えられる国際社会上の「常識」とでも言えるルールです。

そして、UNHCRもこのように言っています。

ノン・ルフールマンの原則は、国際慣習法の規範へと発展してきました。そのため、これは、難民条約・議定書の締約国でない国さえも拘束します。

なので、バングラデシュも難民条約の当事国ではありませんが、この原則を守る必要があるということですね。

このような状況を受けて、先日のASEAN首脳会議ではASEANはミャンマー側の支援をするとのことで声明が出されましたが、内部からは批判も出ているよう。

対して、ミャンマー側はUNHCRやバングラ政府が帰還の邪魔をしているとの味方を示していますが、帰還の実現にはミャンマー側の受け入れ体制(住居だけでなく国民としての権利も)を整える必要があるのはまちがいないでしょう。

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