【書評】苦境を乗り越えた老舗企業の秘密とは?迫俊亮『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』
- 2018.03.02
- 書籍

靴修理でおなじみのミスターミニット。使ったことはないけれど見たことはあるという人は多いのではないでしょうか?
ぼくもその一人なんですが、なんとあの会社、老舗で職人気質が強いにもかかわらず10年連続の業績悪化を立て直したのは29歳の社長だっということをご存知でしょうか?
そんな若手社長・迫俊亮さんの著書をよんで、会社の経営者はもちろん学生や途上国にいる人にも共通する部分が多いと思ったのでご紹介させてください!
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「立派な経営者」を目指す前に、「信頼されるリーダー」へ
本のタイトルにもあるように、迫さんが会社を立て直すために貫いたことはたったひとつ、徹底的に現場の声を拾うこと。
しかし、本書の価値は「現場の声は大事だ!」と言っている点ではなく「どのように現場の声を拾うのか」ということを著者の経験を通して読者に示しているところにあります。
著者は現場の声を拾うために「立派な経営者」を目指すのではなく、「信頼されるリーダー」を目指したとのこと。
そんな「信頼されるリーダー」となり会社を立て直すための要素として響いたのは以下の3点。
- 主語を「私」ではなく「現場の人」にする
- 問題は「人」ではなく「仕組み」にあると考える
- 「弱み」ではなく「個性」に目を向ける
ひとつひとつ見てみましょう。
主語を「私」ではなく「現場の人」にする
そもそも、リーダーとは組織を良い方向に導くためにいるのであって、著者も述べていますが私欲を満たすために組織があるのではありません。
なので、「リーダーは自己成長なんて考えなくていい」とのこと。
ミスターミニットの社長になった僕は、気がつくと自分の成長なんてちっとも考えていなかった。会社をつくり直し、大きく成長させることだけを考えていたら、主語が「オレ」だったときよりもずっとリーダーとしていい働きができている
とも述べられています。
自分を主語にすると自分の想像力と欲が尽きるところで限界が来てしまいますが、目の前の人がどうしたら喜んでくれるのかって考えるとなるといくらでも案は出てきそうですね。
このようにスタート地点を変えるだけで、徐々に現場の人の信頼を得て、声を聞く土台ができるようです。
問題は「人」ではなく「仕組み」にあると考える
続いて2点目。本書では何か課題にぶつかったときには個人に問題があるのではなく、「仕組み」にあると考えます。
確かに、ミスをした時に本人に対して怒ればその人は治るかもしれませんが、「ミスを促してしまうような仕組み」があるのではないかと一段階抽象度をあげると個人レベルではなく組織の成長に貢献できそうです。
ただ、この仕組みというのは単に目を向ければいいというものでもなく、組織ごとのオーダーメイドでないといけないとも念を押しています。
この点、僕自身、大学のゼミ活動で痛感しました。ゼミの活動で、ある法律の大会に毎年出場していて、うちのゼミはかつては入賞常連校。しかし、近年はなんだか成績が振るわない。
順位を少しでもあげたいので好成績を収めた先輩たちが残した資料を読み込んで真似しようとしますがなんだかしっくり来ませんでした。
それもそのはず、今年のチームメンバーの特性に目を向けていなかったからです。同じゼミといっても毎年メンバーの特徴はことなるのでオーダーメイドの仕組みにしないと機能しないんですね。
こんな経験からも、この点は妙に納得しました。
「弱み」ではなく「個性」に目を向ける
短所を直しても「ふつう」に近づくだけで、じつはあまりインパクトはない。注目すべきは長所であり、個性だ。
と述べられているように、個性に目を向ける大切さが説かれています。
というのも、リソースが少ない会社が「ふつうの会社」から脱するためには選択と集中しか差別化を図る方法がないためです。徹底的に現場の社員と話し合うことで社員のもつ個性を吸い上げます。
この点、以前ご紹介したマザーハウスの山口さんのお話を思い出しました。途上国にいると先進国と比べて短所といえるところはいくらでも目につきますが、途上国だからこそ持っている価値があるという考え方です。
迫さんは以前マザーハウスで働かれていた方なのでこういった考え方は共通している部分がおるのかもしれないですね。
まとめ
いかがだったでしょうか?この3点に着目することで、現場の人の不安や不満をカバーしながら、のびのびと仕事をしてもらう環境を整えることができるのでしょう。
このリーダーの着眼点というのは、日本の企業だけでなく、大学のゼミやサークルの運営でも、海外のチーム運営でも当てはまると思います。
どんな組織であれチームをまとめる立場にあるひとにはぜひとも読んでいただきたい一冊です。ぜひごらんください。
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迫さんが働かれていたマザーハウス。迫さんの根幹にマザーハウスでの経験が流れていることが要所要所で読み取れました。そんなマザーハウスとはどのように設立されたのか、山口代表の著書も合わせてご覧いただくと、迫さんをより知るヒントがあるかもしれません。
こちらは企業ではなく国連のリーダーとして現場の大切さを綴った一冊。企業と国連というとやってることは全く違いますが、現場を知る、現場を動かすという点では共通する部分が多く見られると思います。こちらも合わせてぜひ。
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